About this project
Platform for Large-scale and High-freq Artificial Market,Plham(ぷらむ)は、東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻 和泉研究室で開発された人工市場シミュレーションのソフトウェアである。並列処理言語X10を用いて実装されているので、数千銘柄・数十万エージェントの大規模なシミュレーションも可能となっている。本プロジェクトはJST CREST「超大並列計算機による社会現象シミュレーションの管理・実行フレームワーク」より一部支援を受けている。
Goals
人工市場とはその言葉の通り、計算機上に人の手によって人工的に作りだされた架空の金融市場のことである。人工市場に参加しているのは、エージェントと呼ばれる計算機プログラムで表現された仮想的なトレーダーである。エージェント間での売買により仮想的な金融価格が決定されていく。人工市場により、金融バブルのメカニズム等さまざまな市場現象のメカニズムの分析について成果を挙げてきた。また、人工市場は現実の金融市場の構造を反映した枠組みを持ってるので、実際の金融市場での取引制度の設計などに用いられてきた。
Plham は、人工市場を研究や実務に用いたい人たちのための、人工市場シミュレーションの基盤を提供する。特徴としては、通常のデスクトップPCによる比較的小規模なシミュレーションから、クラスタやスパコンなどの高性能計算機による大規模かつ高頻度のシミュレーションまで対応可能なことである。
Plham を用いた金融市場シミュレーションにより、実際の金融市場の制度設計に役立てたり、並列計算の実例を提供することを目指す。
Plham の利用者として次のような人たちを想定している。
- 人工市場の研究者(情報系、計算機に詳しい金融研究者)
- 金融機関の制度設計、分析チーム(含むプログラミングのできる人)
- 並列計算の研究者
Features
Plham による金融市場のモデルとしての主な特徴として次のようなことが挙げ られる。
- 時間がティック時間
- フラッシュクラッシュ(瞬間大暴落)も再現可能
- 数年間の長期間シミュレーションも可能
- 複数銘柄を取り扱える
- 数千銘柄の人工市場も可能
- 指数ETFやオプション(指数・個別銘柄)も含められる
Plham のシミュレーションプラットホームとしての主な特徴として次のようなことが挙げられる。
- スタンドアロンからクラスタ、スパコンなどの大規模シミュレーションまで対応可能
- 様々なサイズのシミュレーションをエージェントやマーケットなどのクラスを修正せずに実行できる
- 新しいクラス(エージェント、マーケット)の実装が容易
Use cases
Plham による金融市場シミュレーションでは次のような具体的な実験設定が豊富にある。
- ダークプール
- 裁定取引による下落伝播
- 高頻度取引、HFT(マーケットメーカ、裁定取引)
- バーゼル規制
- 値幅規制
- サーキットブレーカ
- 空売り規制
References
- [1] Chiarella & Iori (2002) A simulation analysis of the microstructure of double auction markets
- [2] 鳥居、中川、和泉 (2015) 複数資産人工市場を用いた裁定取引によるショック伝搬の分析